「忘れぬ言葉」 (三浦綾子著・小学館) の中に彼女の母が 「かまへん、 相手のひとが喜んでくれる 」 と語った逸話が紹介されております。
子ども10人しかも同居人もおり、 綾子氏は当時13年もの間療養生活、 そのようなある日、 外出した際、 母が財布を落としてしまった時、 「いくら入っていたの。 悔しいことをしたわね 」 と綾子氏がやや愚痴っぽく言うと、 「 でもねえ、 拾った人は喜んでいるかも知れないよ 」 と笑って答えたそうです。
しかも彼女の弟が車に跳ねられて死んだ時も、 「こっちも悲しいけど、 轢いたほうも、 賠償金のことで夜も眠れないかも知れない 」 と語ったそうです。 如何なる時にも相手を思い遣ろうとする器の大きさを見ます。 このような在り方はそれまでの苦労の積み重ねの上に 、築き上げられたもののように思われます。
詩編21編8節に 「王は主に依り頼む。 いと高き神の慈しみに支えられ 決して揺らぐことがない 」 とあります 。この告白も茨の道を通った者である故の喜びの告白であり、賛美であるといえます。

